アラガン社のブレストインプラント/組織拡張器についてのお知らせ
2019年7月25日インプラントの製造メーカーである米国アラガン社から、テクスチャードインプラントの製造を中止し、世界的にテクスチャードタイプのインプラントを回収し、保険適応になるインプラントは新しい丸型のスムースタイプインプラントに変わるとの知らせが来ました。急な案内でしたので皆さん方も心配されたかと思います。
オンコプラステックサージェリー学会や厚労省の迅速な対応のおかげで2019年10月18日にスムースインプラント、2019年11月18日に組織拡張器が順次限定的に販売開始され、2020年1月27日以降にすべての種類のスムースタイプインプラントと組織拡張器が販売開始されて保険適用になりました。
以前のテクスチャードのインプラントは、頻度は少ないですが、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)のリスクがあるとのことでした。日本でも昨年、1例症例がありましたが、その他の発生はありません。この度、保険適応になったスムースタイプインプラントはリンパ腫に関与しないとわれています。FDA(米国)、EU、カナダ、日本の厚労省も現在すでに手術したテクスチャードタイプの組織拡張器やインプラントの入れ替えは必要がないとのことでした。オンコプラステックサージェリー学会のガイドラインでは定期的(1年に1回)は診察やエコー検査をしてくださいとのことです。 胸が急に大きくなったり、しこりを感じたり、赤くなったり、水がたまるなど症状がでましたらインプラントと被膜を除去すれば治るとのことです。
まれな疾患ですが、早期発見が重要となりますので自己検診と医療機関での定期検診の継続をお願いします。
オンコプラステックサージェリー学会の情報は下記より参照できます。
http://jopbs.umin.jp/
BIA-ALCLの発生頻度
現在発表されているBIA-ALCLの発生頻度は、インプラントの出荷数から3817〜30,000に1例とされています。国によって発生頻度の報告はことなり、米国形成外科学会の報告では1/30,000、オーストラリアおよび乳—ジーランドからは1/100〜1/10,000、オランダは1/6.900、カナダは1/24.000と報告されております。本年、日本で初めて1例(17年前にインプラント手術、日本では約20年前から使用されてきた)報告されました。アジアの報告では韓国、タイとシンガポールにおける1例ずつあります。この発生頻度の違いは地理的、遺伝的傾向を示している可能性が示唆されます。ALCLは、他の人工物(整形外科用インプラント、歯科インプラント、注入ポート等)使用症例でもごく希ながら報告されています。
(日本乳房オンコプラステックサージェリー学会、日本形成外科学会、日本乳癌学会、日本美容外科学会(JSAPS)

美しい乳房を再建出来るように日々努力しています。
また、お勤めなど時間的余裕のない方のご相談もお受けします。
女性の医師ですので、なんでも気軽にご相談ください。
乳房再建について
女性にとっては乳がんで乳房を失うとわかった時点で精神的苦痛は察して余りあるものがあります。患者さんは「頭がまっ白になって、気が動転して何も考えられない」とおっしゃいます。患者さんにしてみれば乳がんの手術そのもの、そして生命予後について思い悩み不安を持ち、乳房の再建まで考える余裕のないことも事実です。また、患者さんの中には乳房を失うことを恐れて病院にいくことや、手術をためらっている間にがんが進行してしまう症例もあります。まず、乳がんに対する治療を恐れずに受けること、そして失った乳房の再建ができることをよくご理解いただきたいと思います。
患者さんは、乳がんの手術の前に乳房再建という選択肢もあることがわかっていれば手術を受けるのがこわくなかったとおっしゃいます。再建ができるということを知っていると心強いものです。乳房再建は生命予後に関わる手術ではありませんから、患者さんが希望されるときにいつでもできます。ここ10年の間に乳がんの手術方法も進歩してきました。それに従って乳房の再建法も多様になっています。
乳房再建をすることで日常生活の質が向上します。患者さんはなにより乳房がないことが気にならなくなることがうれしいとおっしゃいます。女性にとっては単に乳房らしいものができるのであれば再建手術を受ける意味がありません。私の目標は健康な方の乳房により近い美しい乳房を再建することです。この目標に向かって日々努力しています。乳房再建、乳頭乳輪再建、また陥没乳頭など胸に関することはすべて気軽にご相談ください。
乳房再建の方法について
乳房再建の方法には、大きく分けて、自家組織を用いた乳房再建(身体の一部を移植する方法:筋皮弁法)と人工乳房を用いた乳房再建(インプラント法)の2種類になります。
乳房再建法の比較
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | ||
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
|
入院期間 | ~1ヶ月 | ~1ヶ月 | 7日間 | 通常入院は不要 3〜4日ホテル等に滞在 |
外来通院期間 | 術後、創部の状態をみるために定期 的な診察 (1、3、6ヶ月 , その後、 1年に1回 ) を受けていただきます | 術後、創部の状態をみるために定期 的な診察 (1、3、6ヶ月 , その後、 1年に1回 ) を受けていただきます | 組織拡張器挿入後から人工乳房を入 れるまでの約6ヶ月の間、約3~4 週間に1回 ( 遠方の方は1~2ヶ月 に 1 回 )、組織拡張器へ生理食塩水 を注入するために通院が必要です。 人工乳房術後は通常通りです | 術後、創部の状態をみるために定期的な診察(1、3、6ヶ月 , その後、 1年に1回 )を受けていただきます。遠方の方は要相談 |
手術時間 | 5~8時間 | 4~5時間 | 約1時間 | 1~2時間 |
手術侵襲(体への負担) | 大きい | 大きい | 小さい | 小さい |
傷あと | 胸と移植する組織の部分(おなか) 両方に傷あとができます | 胸と移植する組織の部分(せなか) 両方に傷あとができます | 乳房切除術の傷あと(胸)のみ | 胸と腹部、大腿に2〜3mmの穴(めだたない) |
乳房再建の自然さ | 身体になじみやすい | 身体になじみやすい | 健側に比べると張りがあり、 やや硬い | 軟らかく自然なさ割り心地 |
経過 | 自分の組織のため、加齢に伴い 多少下垂してゆく 筋肉の萎縮により若干小さくなって いく | 自分の組織のため、加齢に伴い 多少下垂してゆく 筋肉の萎縮により若干小さくなって いく | 人工乳房の耐久性は約10年~15 年と考えられますが、劣化の可能性 があるため、将来交換が必要です。 破損については MRI で検査が可能 です | 自分の組織のため加齢に伴い下垂 |
局所再発の発見 | 見つけにくいので定期的検査が必要 | 見つけにくいので定期的検査が必要 | 見つけやすい | 見つけやすい MRIで脂肪との乳がんとの鑑別は可能 |
費用 | 健康保険適用 | 健康保険適用 | 健康保険適用 | 自由診療 |
方法図 | ![]() |
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入院期間 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
~1ヶ月 | ~1ヶ月 | 7日間 | 通常入院は不要 3〜4日ホテル等に滞在 |
外来通院期間 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
術後、創部の状態をみるために定期 的な診察 (1、3、6ヶ月 , その後、 1年に1回 ) を受けていただきます | 術後、創部の状態をみるために定期 的な診察 (1、3、6ヶ月 , その後、 1年に1回 ) を受けていただきます | 組織拡張器挿入後から人工乳房を入 れるまでの約6ヶ月の間、約3~4 週間に1回 ( 遠方の方は1~2ヶ月 に 1 回 )、組織拡張器へ生理食塩水 を注入するために通院が必要です。 人工乳房術後は通常通りです | 術後、創部の状態をみるために定期的な診察(1、3、6ヶ月 , その後、 1年に1回 )を受けていただきます。遠方の方は要相談 |
手術時間 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
5~8時間 | 4~5時間 | 約1時間 | 1~2時間 |
手術侵襲(体への負担) | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
大きい | 大きい | 小さい | 小さい |
傷あと | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
胸と移植する組織の部分(おなか) 両方に傷あとができます | 胸と移植する組織の部分(せなか) 両方に傷あとができます | 乳房切除術の傷あと(胸)のみ | 胸と腹部、大腿に2〜3mmの穴(めだたない) |
乳房再建の自然さ | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
身体になじみやすい | 身体になじみやすい | 健側に比べると張りがあり、 やや硬い | 軟らかく自然なさ割り心地 |
経過 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
自分の組織のため、加齢に伴い 多少下垂してゆく 筋肉の萎縮により若干小さくなって いく | 自分の組織のため、加齢に伴い 多少下垂してゆく 筋肉の萎縮により若干小さくなって いく | 人工乳房の耐久性は約10年~15 年と考えられますが、劣化の可能性 があるため、将来交換が必要です。 破損については MRI で検査が可能 です | 自分の組織のため加齢に伴い下垂 |
局所再発の発見 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
見つけにくいので定期的検査が必要 | 見つけにくいので定期的検査が必要 | 見つけやすい | 見つけやすい MRIで脂肪との乳がんとの鑑別は可能 |
費用 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
健康保険適用 | 健康保険適用 | 健康保険適用 | 自由診療 |
方法図 | |||
身体の一部を移植する方法 ( 筋弁法 ) | 人工乳房を用いる方法 | 再生医療を用いる方法 | |
腹直筋皮弁(お腹) | 広背筋皮弁(せなか) | インプラント法 | (自家脂肪+ 脂肪細胞移植) |
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乳房再建の症例
症例ごとに主なリスク・副作用を記載します。これらは形成外科教科書に記載されている一般的なリスクです。 ※症例写真の掲載に関して、患者さんの承諾を得ています。

乳がん全摘手術後

組織拡張器を挿入したところ

最終の手術後の状態
乳頭乳輪再建について
当院は乳頭と乳輪を同時に再建しますので、下記のいずれの方法も手術は 1 回で終了します。 *保険適用
乳頭の再建
健側の乳頭を移植する方法(コンポジット移植法)
新しく乳頭の高まりを作る方法(矢永法)
乳輪の再建
乳房再建の流れ
第1段階/組織拡張器による再建手術
手術当日 朝 8:30 当院来院
全身麻酔下で午前中に手術終了、リカバリー室で経過観察後退出
○術後1~2日目 当院外来受診診察処置、持続吸引ドレーン抜去
○術後5または7日目 退院後当院外来受診
以降定期的(3~4週間に1回程度を目安とします)に外来受診時、組織拡張器に生理食塩水を注入していきます。
術後約6ヶ月間の経過観察を行います。
第2段階/人工乳房入れ換え手術
手術当日 朝 8:30 当院来院
全身麻酔下で午前中に手術終了、リカバリー室で経過観察後退出
○術後1~2日目 当院外来受診診察処置、持続吸引ドレーン抜去
○術後5または7日目 退院後当院外来受診ドレーンを抜去する時期が第1段階の手術より若干早くなる傾向があり、若干退院の時期が早くなります。
術後約1年間の経過観察を行います。
また10年間は1年に1回、経過を診てゆきます。
第3段階/乳頭乳輸形成手術
遠方のかたで、ホテルやウイークリーマンションで 1 泊される方もおられます。手術後1週目の外来受診まではご自分で採皮部の処置をします。再建乳頭はそっとしてそのままにしておきます。
○術後1週目 外来受診、採皮部の抜糸
○術後2週目 外来受診、再建乳輪の部分抜糸
○術後3週目 外来受診、再建乳頭の全抜糸
せっかく再建した乳頭が陥没してしまわないように小さなスポンジを用いて3ヶ月 ( ~6ヶ月間 ) 乳頭のまわりを保護しながら固定していただきます ( これはとても大切なケアーです )。術後2週目の抜糸は経過により省くこともあります。
二期再建の場合、以上のように3段階の手術を必要とします。
料金について

再建手術

乳房再建術

(腹部・背部)

再建
*インプラント法は乳がん及び乳腺腫瘍の乳房全摘は保険適用になりますが、
乳房温存の場合は保険適用ではありません。
*自家組織は乳房温存の場合も保険適用となります。
*自家脂肪移植は保険適用ではありません。
*自家培養脂肪移植は保険適用ではありません。
脂肪再生医療を用いた乳房再建
背景: 従来の再建法であるインプラント(人工物)を用いた治療法は異物に対するご自身の反応、インプラント製品の問題、将来的に入れ替えが約10〜15年後くらいに必要であることが問題点でした。自家組織(広背筋や腹部皮弁)による再建は体の侵襲(負担)が大きいことや体の他の部位に傷痕ができることや違和感を生じることが問題点でした。また従来の脂肪注入法は脂肪の生着が低く、吸収されたり、しこりや石灰化が生じたりすることが問題点でした。
こうした問題を解決するために再生医療を用いた乳房再建は開発しました。ご自身の脂肪を腹部や大腿からごく少量(約2〜3cc)採取して、体外で脂肪細胞を培養して増やしたのち、ご自身の脂肪組織と混合して、体内へ移植するという新しい治療です。患者さまご自身の脂肪細胞を使うため、異物に対する反応が少なく、培養した脂肪細胞が自家脂肪の生着を助ける役目をするため、従来の脂肪注入移植の生着率は30〜40%いわれていますが、本法は80%以上の脂肪の生着が高まることにより、治療結果全体が向上しました。また、体の傷あと(2〜3mm)は最小限になり、手術時間や体の侵襲は従来の自家組織手術より短く少なくなりました。将来的に入れ替えがいらないのも利点です。健側乳房に似た柔らかい乳房が形成されること、また冷たい乳房でなく体温と同じ暖かさの乳房が形成できることが利点です。
2015 年、再生医療等の安全性の確保等に関する法律が公布されこの法律に対応して、当院は同年 4つの第2種再生医療の細胞加工施設として認定されました。その1つとして自家培養脂肪細胞移植の再生医療提供施設として認定されました。その他の再生医療として自家培養表皮移植、自家培養軟骨細胞移植、自家培養線維芽細胞注入も認定されました。矢永博子は長年、約 30 年間にわたり、再生医療の研究と治療を継続して取り組んできました。これらの治療法がこの度、承認されて継続して治療を行うことが許可され患者さんに貢献できたことは喜ばしいことです。
細胞加工施設番号: FC7140009
第2種再生医療、自家培養脂肪細胞移植の再生医療提供施設番号:PB7150005
詳しくは再生医療を用いた乳房再建コーナーをご覧ください。

担当医師より

患者さんが希望されればいつでもお話をすることは可能ですし、再建をするかしないかはよく話を聞いて決めてください。乳がんの治療と再建はまったく別のものですから、再建をしたあとも必ず、乳腺外科で乳がんの定期検診を受けられるよう勧めます。
・家族や友人と温泉旅行にいきたい
・きがねなく温泉に入りたい
・スポーツをしたい
・胸の開いた洋服を着たい
・補装具(パットなど)が不便である
ひとりで思い悩まないでぜひ私ども形成外科医にご相談ください。
連絡先
手術のため初診、再診の診察が行えない時間帯がありますので
予約の際にお電話でご確認をお願いいたします
休診日 不定休
『現在は、水曜日・日曜日を中心に休診日を設定しております。
学会・出張・治療を希望される方の多い時期等は休診日が変更されます。
3ヶ月間の休診をカレンダーに記載しているのでご確認ください。』