健側の乳頭を移植する方法(コンポジット移植法)と新しく乳頭の高まりを作る方法(矢永法)を行っています。当院は乳頭と乳輪を同時に再建しますので、いずれの方法も手術は 1 回で終了します。
保険適用で行っています。

再建フローチャート

乳頭乳輪再建は女性のシンボルであり、乳房再建の最後の仕上げになります。

乳頭の再建

乳輪の再建

コンポジット移植法

乳頭の一部を採取して患側へ移植する再建法です。健側の乳頭が大きい場合に乳頭を半切して患側へ移植する方法です。言うまでもなく色調、質感が最も似ているのは健側の乳頭です。ですから、乳頭が大きい場合はコンポジット移植法を第一選択とします。しかし、あくまで患者さんがこの方法を希望することが前提となります。

利点と欠点

利 点
1)組織が同じである
2)色調、質感が同じである
3)乳管部が支持性を保つ
4)長期的にはある程度projectionが保たれる
5)健側の乳頭縮小を兼ねる
欠 点
1)健側の乳頭を傷つける

手術方法

健側乳頭を半切して採取

乳頭の採取方法は楔状、垂直に半切、先端切除する方法があります。乳頭が横に大きい場合は楔状、垂直に半切を行います。乳頭が長い場合は先端切除して乳頭を採取します。


楔状に半切

垂直に半切

先端切除
※乳輪部に植皮を行わない場合はタトゥー(入れ墨)にする方法もあります。
適 応
1)健側の乳頭が大きい
2)健側の乳頭が下垂している
3)患者さんが希望する
適応外
1)健側の乳頭が小さい
2)両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
3)将来授乳の可能性がある
4)温存例で乳頭部に放射線照射されている
5)患者さんが希望しない

矢永法

これまでの皮弁だけで乳頭をつくる方法(後述)では支持性がないため 1 年以上すると高さがなくなり平らになってきます。そこで皮弁の中央に軟骨や人工骨(医療用)をいれて、皮弁で包み込み支持性を保つように工夫した再建方法です。
乳頭の高さがでます。乳頭と乳輪の両方に植皮をします。

利点と欠点

利 点
1)健側の乳房を傷つけない
2)乳頭の高さが得られる
3)手術が1回で終了する
4)タトゥー(入れ墨)をしないでよい
欠 点
1)植皮が必要
2)人工骨は皮膚のうすい方や放射線照射した方は露出することがある(3%)→人工骨を抜去する

手術方法

真皮脂肪弁 + 耳介軟骨または人工骨移植 + 植皮


予定している乳頭の皮膚を薄く剥離

2葉の脂肪つき皮弁を持ち上げ、
2葉の脂肪つき皮弁の中央に
耳介軟骨または人工骨を置く

皮弁でつつむ

大腿から皮膚を移植する
※乳頭がつぶれないよう、抜糸などが終了したら、3ヶ月くらいはスポンジで乳頭乳輪を保護する。
適 応
1)健側の乳頭が小さい
2)両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
3)将来授乳の可能性がある
4)患者さんが希望する
適応外
1)患側皮膚に放射線照射されている
2)患者さんが希望しない

局所皮弁

この手術法はいろいろな種類がありますが、スター皮弁(星の形、三つ葉に似た形をしているためその名前がつきました)とスケート皮弁(スケート靴の形をしているためその名前がつきました)が一般的に用いられています。
スター皮弁はタトゥーを行い、色を付けます。スケート皮弁は乳輪部に植皮、乳頭部にタトゥーが必要です。

利点と欠点

利 点
1)健側の乳頭を傷つけない
2)植皮をしないでよい(スター皮弁)
3) 植皮の範囲が小さい ( スケート皮弁 )
欠 点
1)二期的にタトゥーが必要
2)乳頭形成の手術と乳輪形成術と2回手術が必要
3)長期的に見ると、皮弁は柔らかい組織で支持組織がないため、乳頭が平らになる
4)タトゥーは数年たつと薄くなるので追加のタトゥーが必要

手術方法

スター皮弁


デザイン:三つ葉、星形

両側の皮弁を持ち上げる。
中央の皮弁には脂肪を
付けて挙上する

両脇の翼の部分の皮弁を
縫合し、乳頭側面を形成する。
その他は縫い合わせる

側面を縫い合わせる

中央の脂肪のついた皮弁で
乳頭上部に蓋をするよう閉じる
※術後3ヶ月以上経過して二期的に乳頭部にタトゥー(入れ墨)をいれます。入れない場合は乳頭が白くなります。
適 応
1)健側の乳頭が小さい
2)両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
3)将来授乳の可能性がある
4)患者さんが希望する
適応外
1)患側皮膚に放射線照射されている
2)患者さんが希望しない

スケート皮弁


デザイン:スケート靴

皮弁を持ち上げる

中央は脂肪がついた
皮弁になり、両翼は脂肪が
つかない皮弁となる

両翼を縫い合わせる

乳輪部に大腿の皮膚を
移植し、縫合する
※術後3ヶ月以上経過して二期的に乳頭部にタトゥー(入れ墨)をいれます。入れない場合は乳頭が白くなります。
適 応
1)健側の乳頭が小さい
2)両側乳癌で乳頭乳輪が両側性にない
3)将来授乳の可能性がある
4)患者さんが希望する
適応外
1)患側皮膚に放射線照射されている
2)患者さんが希望しない